ブロックチェーンベースの債務市場は成長し続ける
私のパートナーも私も二つの基本的な投資における命題を抱えている
- (1) 安全な、ソフトウェアベースの価値の保存方法が、デジタルネイティブの間でより普及すると考えられるということと、
-(2) すべての株式、債券、通貨、そしてコモディティ (商品) は最終的にデジタル化されるということである。この毎朝の通信では、いつも一つ目の命題を多く取り扱っている。なぜなら、一つ目の命題は、主要なメディアにおいて二つ目の命題よりも多く扱われており、また、現在起きている多くのマクロ経済学的なものごとの対象となっているからである。
このように一つ目の投資における命題に注目するということは、二つ目の命題に対して私達が興味を失ったということではない。むしろ、資産をデジタル化するということに関して、私達はかつてない希望を抱いている。なぜかというと、主要な機関が、新しいテクノロジーで従来型の資産をアップデートすることで、その利点を取り入れようとしていることがわかるからだ。
この命題を基礎付けるのは簡単なアイデアである。つまり、金融市場は過去、重大な技術的転換を経て莫大な価値を生み出したことがあり、そして、また新たな転換が訪れようとしているということである。最初の転換は、資産が物理的 (物理的現金、物理的モーゲージ (譲渡抵当)、コモディティへの物理的請求権など) だったアナログ時代から、資産が、中央化されたデータベース (電子的CUSIPsなど) において1と0で表される今日の電子時代に変遷するというものだった。
このアナログ時代から電子時代への転換は、決済時間の短縮、低コスト化、高効率化、詐欺に対するより高度なセキュリティ、資産の流動性の増加、コンプライアンスの向上など、多くの利点をもたらした。この技術的転換を主導した組織や個人は、換算すると数千億ドルになる価値を獲得し、それは今日私達が世界の金融システムと考えているものの大部分の構築に繋がった。
次の、すでに私達が着手しているであろう転換は、電子時代からデジタル時代への変遷である。この新世界では、資産は、DTCCの株券のようにどこかに保管される物理的資産の代わりとしての電子的CUSIPではなく、デジタルネイティブなものであり、ソフトウェアやコンピュータファイルそのものが法的資産となるのである。
最初にデジタル化された資産形態は通貨だった。十年前のビットコインの誕生によって私達は、無記名資産である非中央集権型のデジタル通貨を獲得した。ビットコインは (物理的現金のような) 無記名資産が持つすべての利点 (と弱点) を持っていたが、ビットコインは100パーセントデジタルネイティブだった (要するに、ビットコインはデジタルな領域で作られ、デジタルな領域で保持され、デジタルな領域で管理されているということだ)。ビットコインの利点がよりよく理解され始めると、多くの組織がそれに追従して、不換紙幣、物理的コモディティに価値担保されたデジタル通貨、そして、更には中央銀行に価値担保され、アルゴリズム的に管理されるステーブルコインの試みなど、様々に通貨をデジタル化してきた。
私の見立てでは、次にデジタル化される資産形態は債券になるだろう。デジタル化の利点を債務市場で活用するための初期の試みを三つ挙げよう。
世界銀行は1億ドル以上の、ブロックチェーンで運営する債務金融商品 (要するに、ブロックチェーンベースの債券で、世界銀行が "bond-i" と称するもの) を発行してきた。発行は二つのトランシェに渡って行われ、また、オーストラリア・コモンウェルス銀行 (CBA)、RBCキャピタル・マーケット (RBC Capital Markets)、そしてTDセキュリティーズ (TD Securities) に監督されている。
非中央集権型金融という、ソフトウェアベースの非中央集権的なサービスが従来の金融サービスを供給するという新しいトレンドが、最近、債務市場において利用されることが増えてきている。(主にMaker, Dharma, dydx, Compound Financeにおいて) 総未償還残高はおよそ1.35億ドルで、融資の組成は七月に最も多く行われた。
フィギュア・テクノロジーズ (Figure Technologies) はHELOC (さしずめデジタルモーゲージといったもの) を発行してきた。そして24ヶ月と経たないうちに月あたり8500万ドル以上の融資組成を達成した。フィギュア・テクノロジーズはこのままいけば2019年中に10億ドル以上の組成を達成するだろう。また、フィギュア・テクノロジーズは現時点でおそらく最も著名なブロックチェーンベースの債務発行者である。(私はモーガン・クリークのベンチャーファンドを通して投資している。)
債務のデジタル化はまだ始まったばかりだが、一日が過ぎるごとに、確実に、より持続可能で実現可能であると感じられるようになってきている。CBAのブロックチェーン・AI部門のトップであるソフィー・ギルダー (Sophie Gilder) によると「CBAは、ブロックチェーン技術が、既存の市場インフラに対して、新しいレベルの効率、透明性、そしてリスク管理能力を実現するという裏付けを、同一のプラットフォームを通した、ブロックチェーン技術とそれに続く債券管理を利用した最初の債券発行、流通市場、そしてタップ発行より得ています。私たちは次に、機能を追加することで、決済、保管、そして法規制遵守の高効率化を実現しようとしています」ということだ。
このように、従来の金融に従事する者たちが、元々、従来の金融を揺るがすとされていた技術の利点に対して興味を持っていることは、言うまでもなく良い兆候だ。しかし、これらのことを俯瞰して捉えることは大切なことである。ブロックチェーンベースの債務はまだまだ小さいものだからだ。
元ブルームバーグ記者で、イーサリアムについて書かれた初めての本の著者であるカミーラ・ルッソ (Camila Russo) は、非中央集権型金融を取り扱った彼女の日刊のニュースレターの中で、「従来の貸付市場と比べて、1.36億ドルの未償還残高はとても小さいものです。しかし、充分な試験を経ていない技術を使用するこれら新興のプラットフォームにとって、少額を扱うことから始めるのは決して悪いことではないかもしれません。少なくとも、スマート・コントラクト型の保険が普及し、システムがしっかりと検証されるまでの間は、ですが。」と語った。
ベンチャーキャピタル的な戦略を通して資産を運用する場合、正しくトレンドを見定めることは重要なことであるし、私は早期に市場に参入したい。ブロックチェーンベースの債務市場はまだ初期段階だという風に感じるのも事実だが、世界全体の100京ドルの債務市場のうち、無視できない分量がデジタル化された場合、価値の上昇はとても大きなものになるだろう。
これから一から二年の間、このトレンドには注目しておくといいだろう。私たちの二つ目の投資における命題は、実りの時を迎えようとしている。
-Pomp-
OffTheChainジャパン
翻訳者ペンネーム:Decryptor