三式簿記は現代で最も重要な発明かも知れない
Triple-entry accounting may be the most important invention of our lifetime

私たちは複式簿記が簿記システムの基本である時代を生きてきた。このシステムは中世の中東で発明されたとされているが、歴史学者の中には西暦70年に複式簿記の最も基本的な形が創られたと考える者や、韓国の高麗王朝が初めて複式簿記を利用したと主張する者もいる。
ヨーロッパにおいて複式簿記は、フィレンツェの商人で、ファロルフィ(Farolfi)という企業で働いていたアマティーノ・マヌッチ(Amatino Manucci)が、13世紀の終わり頃に使ったのが初めてだとされている。マヌッチが管理していた台帳は完全な複式簿記の形式をしていたが、この手法は、ジョバンニ・ディ・ビッチ(Giovanni di Bicci de' Medici)が14世紀にメディチ銀行で利用するまで普及することはなかった。
さて、複式簿記とは具体的にどういうものだろうか。
ウィキペディアによると:
Double-entry bookkeeping, in accounting, is a system of bookkeeping so named because every entry to an account requires a corresponding and opposite entry to a different account. The double-entry has two equal and corresponding sides known as debit and credit. The left-hand side is debit and right-hand side is credit. In a normally debited account, such as an asset account or an expense account, a debit increases the total quantity of money or financial value, and a credit decreases the amount or value. On the other hand, for an account that is normally credited, such as a liability account or a revenue account, it is credits that increase the account's value and debits that decrease it. In double-entry bookkeeping, a transaction always affects at least two accounts, always includes at least one debit and one credit, and always has total debits and total credits that are equal. This is to keep the accounting equation (below) in balance. For example, if your business takes out a bank loan for $10,000, recording the transaction would require a debit of $10,000 to an asset account called "Cash", as well as a credit of $10,000 to a liability account called "Notes Payable".
Assets = Liabilities + Equity
The accounting equation is an error detection tool; if at any point the sum of debits for all accounts does not equal the corresponding sum of credits for all accounts, an error has occurred. However, satisfying the equation does not guarantee that there are no errors; the ledger may still "balance" even if the wrong ledger accounts have been debited or credited.
日本版:
複式簿記(ふくしきぼき、英: Double-entry bookkeeping system)とは、簿記において、全ての簿記的取引を、その二面性に着眼して記録していき、貸借平均の原理に基づいて組織的に記録・計算・整理する記帳法のことをいう。
取引の二面性というのは、簿記的取引には原因としての側面と結果としての側面があること、例えば建物の現金による購入という1つの取引においては、建物の増加(資産の増加)という側面と現金の減少(資産の減少)という2つの側面があることを意味する。複式簿記ではこの取引の二面性に着眼し、資産、負債、純資産、費用又は収益のいずれかに属する勘定科目を用いて借方と貸方に同じ金額を記入する仕訳と呼ばれる手法により記帳がなされる。
複式簿記では1つの取引における取引金額を、取引の原因と結果の観点から借方と貸方に振り分け、それぞれ同一金額を記録してゆくことになるので、最終的に借方と貸方の合計額は常に一致することになる。これを貸借平均の原理という。
複式簿記は単式簿記よりも手順としては複雑になるが、資金の収支に限らず全体的な財産の状態と損益の状態を把握できるという利点がある。
今日、単に簿記といえばこの複式簿記を指す。会社の決算報告では複式簿記の原則により作成された損益計算書、貸借対照表の公表が義務付けられている。
私は、複式簿記が具体的に何であるかということについてこれ以上の説明はしない。なぜならあなたは既にそれがどのように機能するかということを分かっているだろうし、日常的に使っているだろうからだ。しかし、複式簿記の発明が有史以来最も重要な変曲点の一つに繋がったということを理解しておくことは重要である。
1989年まで複式簿記は比肩されることはなかった。
1989年に井尻雄士教授は複式簿記を超える変曲点に繋がるであろうものを発明した。三式簿記である。
しかし誰もそれに注目せず、気にすることもなかった。
なぜなら三式簿記は会計学と暗号学という二つの領域に対する興味と造詣を必要とするからである。これらは当然、最も人気のある領域ではないわけである。
三式簿記の重要性は2005年に発表された研究論文のアブストラクトにおいてイアン・グリッグによって以下のように説明されている。
「金融暗号理論によるイノベーションである、デジタル署名レシート(digitally singed receipt)は、古典的な複式簿記に課題を突きつける。この二つが合わされば、競合するわけではなく、より強力なシステムを形成することになる。電子マネーのより幅広い範囲に会計を適用することで、三式簿記を得ることができる。
このシステムは攻撃的なユーザーに対し、会計システムを強固にする。信頼性の高い会計を実現することでただコストを下げるだけでなく、企業、公共の会計が持つ未来のニーズに積極的な影響を与える仕方で、より強力なガバナンスを可能とする。」
三式簿記によって、取引に参加しているか否かに関わらず、価値の取引が実際に行われたことを証明することができるようになる。このことは、中央集権的な第三者に頼るもしくは信用する必要なく、取引を証明することができるようになると考えるといいだろう。
これは、オートメーション、マシンツーマシン取引、金融システムのデジタル化が普及するにあたってとても重要なことである。以前は、これらのシステムは独立しており、相互に運用することはできなかった。文字通り相容れなかったのである。
三式簿記の発明により、資産はそれぞれ個別にレッジャーベースのシステムを持つことになる。そのようなレッジャーベースのシステムが信頼できる情報源となることで、各システムは、以前から接続されていたか否かに関わらず、相互に取引をしあうことができるようになるのである。
さて、ここで私が複式簿記と三式簿記についてニュースレターを記している理由を話そう。それは、ブロックチェーンが、自動簿記を可能とする三式簿記の応用であるに過ぎないからである。今日、これは重大なことのように思えないかも知れない。しかし、私は、最終的に、私たちが生きる現代で最も偉大なイノベーションになるのは三式簿記だと予感している。
ビットコイン、ブロックチェーン、暗号通貨を取り巻く熱狂のサイクルを見て回るとき、社会の関わり方の根幹をなすもの(複式簿記)を大きく揺るがすと目されているこれらのものを支える、数学的、技術的なイノベーションがあることは心に留めておこう。上手くいけば、三式簿記は人、機関、同僚の間にある信用の崩壊を加速させるだろう。
いずれ人を信用する必要はなくなる。ただ起きていることを承認するだけで良い。そしてそれは、私たちが未だかつて見たことがないレベルのイノベーションと経済成長を呼び込むだろう。
-Pomp-
OffTheChainジャパン
翻訳者ペンネーム:Decryptor