最近、私は色々な友人とインフレについて話をしている。金融や投資に関して大きな議論の的になっているのは、過去12ヶ月ほどの間に渡って行われた数兆ドルの量的緩和によって高水準のインフレが起こるかどうかということだ。
インフレが起こらないと信じている者は二つの異なる、しかし関連している議論を根拠としている。まず、彼らは公式の消費物価指数(CPI)のインフレデータを指し示す。
米労働統計局のこのチャートを見て分かるように、2008-2009年以降、CPIは概ね2.5%から0%の間で推移してきた。彼らの意見では、連邦準備制度と政治家が行った金融介入にも関わらず、インフレは過去10年間でアメリカ国民の日常には広まっていなかったということだ。
この歴史的な観点からの議論をもとに推定すると、今後、連邦準備制度が何をするかに関わらず、低水準のインフレが起こるということが言える。ここで二つ目の論拠に移ろう。
二つ目の論拠は、世界はより進んだテクノロジーを利用することができる世界になりつつあるために、デフレ圧力が生まれるというものである。テクノロジーは労働のコストを下げる。テクノロジーは生産のコストを下げる。そしてこの議論を支持する者にとっては、テクノロジーはインフレの影響を継続的に減少させる可能性を持つだろう。
つまり、この人たちによると、連邦準備制度が何兆も刷るにしろ、傍観するにしろ、インフレは比較的低水準を保ち続けるということである。大した問題ではないということだ。確かにいずれの議論にも重要な点はあると考えるが、結論には同意しない。
まず、インフレがどのような影響を国民にもたらすかを考えてみよう。全ての社会経済的集団に対して一意に適用可能な単一のインフレ数はないのである。例えば、社会経済的に上位20%に属する集団は下位20%の国民が経験するそれよりも低い水準のインフレを経験する。各集団が持つ投資可能な資産の割合や、それぞれが消費する品物やサービスの種類などが理由だ。
二つ目は、異なる地理的な場所にいる人は異なる水準のインフレを経験するということである。ニューヨーク市にいる人がネブラスカ州リンカーンに住んでいる人と同じ経験をするとは考えにくい。
では、どうすればインフレによって何が起きているかを理解することが出来るだろうか。
私が見つけた、真のインフレを量るのに最高の指数はChapwood Indexである。作成者のエド・ブトゥスキー(Ed Butowsky)は、アメリカ国民の大部分の経済生活が以前にも増して置き去りにされるのを見かね、インフレをより正確に計測することを目指している。彼は、アメリカ国民は2%のインフレを克服するという目標を立てて生きているが、実際のインフレ率はそれよりも高いためにいつまでたってもインフレを克服することが出来ないという状況が出来上がったと考えた。
Chapwoodのウェブサイトに載っている以下のまとめはこの問題の理解に必須である。
「中流階級のアメリカ人—一連の決まった手順で増給される給料制の労働者や毎年増額される企業年金と社会保障給付に頼る退職者—が生活水準を保つことができない理由がここにある。簡潔に、そして単純に、この指数によって彼らの収入が支出に追いついていないことが示され、また彼らが以前にも増して政府に向かって救済のための給付金制度を求めなければならなくなっているわけが明らかになる。
その理由は、給料と給付の増額が、一世紀以上の間アメリカ市街の典型的な「財のバスケット」の物価動向を反映するとされてきた—しかし、30年以上の間その物価動向を反映していない消費者物価指数(CPI)に紐付けられているからである。
中流階級は過去30年間で大幅に購買力が低下したことで、貯蓄が尽きた際、給付金制度を求めなければならない状況に追い込まれる人が増えている。増給と給付金増額が誤ったCPIと紐付けられている限り、この傾向は継続するだろう。
CPIが私たちの生活費の増加を表すという誤った観念こそ、Chapwood Indexが作られた理由である。CPIとの違いは単純だが、非常に重要である。
Chapwood Indexは:
ほとんどのアメリカ国民が税を差し引いた後の収入を費やす500品目の実際の価格上昇を報告する。小細工、変更、季節調整はない。実際の価格である。
私たちの国の経済力、精神力を破壊しているCPIの不正確性を照らし出す。
私たちがCPIに頼ることで中流階級を追い詰めていることと、市民が以前にも増して彼らを救済するための政府の給付金制度に頼っているわけを明らかにする。
アメリカ国民が賢い消費者になり、金遣いと個人ファイナンスを管理するよう促すと主張する。
CPIの不正確性は1983年、激しいインフレの起きた頃、米労働統計局が社会保障給付や連邦年金の増加を抑制するために、計算を誤魔化しはじめた時に始まった。
しかしこの変更は給付金制度以外にも影響を及ぼした。通例、賃金や退職給付はCPIに紐付けられているために、この変更は全てに影響を及ぼした。そして30年後の今、誰もがその長期的な結末を知っている。給料、社会保障、年金に頼っている人に尋ねれば誰もが毎年の収入の増加は毎年の支出の増加とはかけ離れていると答えるだろう。入ってくる分が出て行く分よりも多い。平均的なアメリカ国民にとって大惨事と言える状況が見えてくる。」
さて、CPIの数字に関わる問題を理解できたところで、主要なアメリカ市街の真のインフレ率は実のところどれぐらいなのだろうか。
げぇっ!Chapwood Indexは過去5年間の平均インフレ率が上位10市では8.1%から12.9%だと示している。これは2%のインフレ率という推定からは大きく離れている数字だ。
これについては、株式市場で毎年平均して8%のリターンを創出しているだけだとすると、投資リターンがこれらの街の本当のインフレ率に追いついていないという風に考えることが出来る。これは投資可能な資産を持つ上位50%のアメリカ国民にとって大問題であって、ましてや投資可能な資産を持たない下位50%のアメリカ国民の経済的健全性については死の宣告のようなものである。
私が真のインフレとCPI数を比較してこの考えを提示しているのは、何千万人ものアメリカ国民のファイナンスに対して影響を及ぼしているもののうち単独で最も重要なものだからである。私たちの通貨の価値が継続的に減少していることで、投資可能な資産を持つ者が豊かになる一方で、財産を現金で保存している者が苦しめられている。このシステムは意図されたとおりに機能している。これは仕様であり、バグではない。
貯蓄家が苦しめられ、投資家が報われる。これが私がビットコインのようなものに強気な一番の理由である。これは世界で単独で最も強力な財産を守る手段である。短期的には極端に大きなボラティリティがあるが、長期的にはビットコインは輝く。それは購買力をよく保護し、不換紙幣の減価の危険を回避させてくれる。
より多くの人がこの構造的な有利に気付くにつれて、ビットコインに大量の資本が流れ込むと私は信じている。今一部の人が投機的資産と考えているものが、実際には彼らがひどく必要としているパラシュートのような救いなのである。主流派の市民がこの話題について多くを知るようになるのは時間の問題だ。早くに理解し、勇気と信念を持って行動した者が他の者よりも良いポジションにつくことが出来る。
10%のインフレが合衆国で発生しているというのはむちゃくちゃな話だ。ビットコインの需要を推し進めるのにハイパーインフレのような出来事は必要ない。ただステータスクオがそのまま続けばいいのである。
良い一週間を。また明日。
-Pomp-
OffTheChainジャパン
翻訳者ペンネーム:Decryptor