世界は私たちの多くが既に知っていることに気付いた。ゲームが変わったのだ。これがWall Street BetsとGame Stopを中心に起こったことから私の導き出した結論だ。これは一夜にして起きたような出来事ではなく、10年の間に展開、加速してきた複数のトレンドの集大成である。
まずは心理的側面について話をしよう。西洋社会には、一般人を犠牲にして利益を得るヘッジファンドや銀行に対する根深い軽蔑がある。2008年の住宅危機にしろ、ネイキッドショートセリングにしろ、トレードをフロントランニングするヘッジファンドにしろ、一般的な市民は常に彼らが不利な立場にあると感じている。幾度にも渡って彼らは傷つき、ゲームに参加していることにさえ気付いていない。
アレクシス・オハニアン(Alexis Ohanian)が見つけたこのRedditの投稿を読んで欲しい。
「2008年の危機の時、私は10代前半でした。私はウォール街の者たちが起こした見境のない行動が私の個人的な生活や私に近しかった人たちの生活にもたらした絶大な影響を鮮明に覚えています。私は幸運でした。というのも、私の両親は慎重で疑心暗鬼になっていたため、ある程度の食料を保存していたのでした。私の家族があの危機に見舞われたとき、私たちは我が家を離れずに済みましたが、一年間にわたってパンケーキミックス、粉ミルク、豆類、そして米を食べて過ごしました。それ以来、私の両親は保存食を置き、都度新鮮なものに買い替えています。
私に近しい人、私の友人や親族は私のように幸運ではありませんでした。私の叔母は私たちと一緒に過ごすようになり、私の家族に出来る限りの賃料を払い、何かしらの仕事を探していました。学食のケチャップから作ったトマトスープの味がどんなものか知っていますか?私の友人はそれを知ることになりました。危機のどん底から一年近くが経った頃、父のおかげで家族の収入が安定するようになった頃、父は他者の手助けをするために、時々私の友人の父親に家の仕事を依頼していました。一人は我が家のゲストルームに新しいクローゼットを作りました。また一人は裏庭の造園をしました。私はいつまでも私の両親をとても誇りに思うでしょう。なぜなら必要な時には、まず間違いなくお金がまだ厳しかったあの時でさえ、それを絶対的に必要としていた人を助ける気配りや思いやりを持っているからです。
Melvin Capitalへ:お前たちはあの時私が憎んでいた全てのものの味方だ。お前たちは企業を利用し、市場やメディアを利己的に操ることでカネを稼ぐ企業だ。お前たちが未だに存在していることは、2008年のあの危機の時、あれだけの苦難を引き起こした責任を抱えている者たちが断罪されなかったことを克明に表している。そしてお前たちのその当然のように法律を無視する性質は(Melvinの法務部の者たちにとっては疑惑なのだろうが)違法なネイキッドショートセリングを通して数ヶ月前に明らかになったし、また最近のことでは、立会外取引でお前たちがむちゃくちゃな市場操作をしたことは、お前たちが2008年から何一つ学んでいないことを示している。むしろ、お前が何を学ぼうというのか。お前たちのような輩は、何百万人の人生を悪化させる劣悪で違法な経済的判断を下しても救済され、むしろ褒美を受けるのだから。私は数日前株を買った。私は貯金をGMEに落とし、今月の賃料をクレジットカードで支払い、賃料に使うはずだったカネで更にGMEを買った(このWall Street Betsにいる人にはお勧めしない)。私はホールドしている。これは私にとって、また何百万の者にとって個人的なことだ。立会外取引でGMEの価格を120ドルまで落とそうが私はどこにもいかない。何千ものRedditのボットを雇おうが私はホールドし続ける。全ての主流派のメディアを使って私たちを悪者に仕立て上げたって関係ない。私は私の出来る限りお前たちを苦しめたいだけだ。」
この苦痛の感情は2008年にズコッティ公園のウォール街を占拠せよ運動で出現した。その後、参加していた者はその公園を去っただろうが、ウォール街によってむちゃくちゃにされたという感情が消えたことはなかった。
むしろ、この感情は連邦準備制度と政治家によって刺激されてきた。彼らは市場に介入し続け、量的緩和によって市場を操作し続けている。ドルは信じられない速さでその価値を失い続けているが、誰も気にも留めていないようだ。これによって投資可能な資産を持たない45%のアメリカ人が苦しんでいる。彼らはいつまでも前に進めないと感じている。彼らは全てのものの値段が高くなり続けていると感じているが、彼らの収入はいつまでも上がらない。
そうだな、彼らは正しい。正にそれが今起こっていることだ。人は、投資家を助け貯蓄家をくじくように作られたシステムにむちゃくちゃにされている。これら全ての市場操作や市場介入は資産価格を上昇させ、貯蓄の価値を下げる。
そうして取り残されているという感覚と合わせて、過去の出来事によって心理的な傷を負った人が何百万と生まれる。しかし、インターネットが登場して、ライフラインが構成される。情報、コミュニケーションツール、金融市場へのアクセスは過去10年の間で急速かつ大幅に簡易化された。ゲームに参加するためにブルームバーグターミナルや従来の証券口座を使う必要はない。
ヘッジファンドの会食に招待してもらうためにハーバードやウォートンに行く必要もない。自分の発言を聞いてもらうためにスーツとネクタイを着用する必要もない。インターネットでは世界のどこにいても調べ、学ぶことが出来る。同じような考えを持った者たちと自由にコミュニケーションを取ることが出来る。そうして金融市場への障壁はほとんどなくなった。
一般人に情報、コミュニケーションツール、市場へのアクセスを装備させると、長い間いかさまをしてきた機関に群衆が立ち向かうという構図が出来上がる。しかしそこには一つ問題がある。潮の流れが変わろうとしたその時、ゲームが終了されるということだ。
全く文字通りに、ヘッジファンドと金融機関は、カネを失うことで泣いているのである。なんてジョークだ。彼らは天才的な資本の管理者であると見せかけていながら、現在、「DeepFuckingValue(ディープクソバリュー)」とか「Roaring Kitty(咆哮する子猫ちゃん)」といったユーザーネームを名乗るインターネットのその辺の人に晒されているのである。見たくないわけがないだろう。
今朝これは更に悪化した。従来の金融界がいきり立っているだけでなく、多数の個人投資家が参加している株の取引がロビンフッドによって大部分停止されたからだ。ディスコードは昨夜Wall Street Betsを閉め出した。言葉は悪いが、どんなふざけたことが起こっていやがるのか。
私がいつも言っているように、海賊は死ぬか生きながらえて権力者になる。反権力を誇りに思っていたはずの企業は、自身の勇気と信念を証明しなければならなくなった途端に権力に従うようになる。彼らは小口投資家の味方ではない。彼らはどんな者であれ彼らのビジネスを守ってくれる者の味方だ。それは彼らの権利であって、私たちはそれを尊重しなければならない。しかしそれに好意的である必要はなく、彼らに構い続ける必要もない。
ではこれからどうなってゆくだろうか。
これは将来のデジタルな分散型金融システムにとって最高のマーケティングキャンペーンである。ビットコインは中央銀行に中指を突きつけている(訳者注:fuck youの意味)のである。分散型取引所は集権型の取引所に消え失せろと言っている。市場操作や介入のない、年中24時間毎日トレードされるデジタル資産が私たちの行き先である。裕福にしろ貧乏にしろ、アメリカ人にしろ中国人にしろ、頭が良いにしろ悪いにしろ、情報通であろうとなかろうと、市場に参加することが許される。
私たちは富を知能の指標として使わなくなる。私たちは人が資産価格の将来的な見込みに資本を賭ける自由な市場を得る。正しければ勝つ。正しくなければ負ける。それだけだ。市場操作や介入は忘れ去られなければならない。従来の機関には好ましくないだろうが、新世界において彼らに発言権はない。分散型の未来へようこそ。
この展望を実現するためにはまだまだ多くの仕事がなされなければならないが、私たちは着実に前進している。ロビンフッドは様々な株の取引を停止することができる。市場は売買停止措置を講じることが出来る。しかし誰にもビットコインを止めることは出来ない。誰にも分散型取引所を停止することは出来ない。もはや人や企業が正しい行いをするとかしないとかいう話ではない。正しい行いをすることしか出来ないテクノロジーを開発するという話なのである。100%どんな時でも正しいことを。
合衆国において自由な市場はしばらくの間過去のものとなっている。一般人は抵抗する術を持たなかった。彼らが情報、コミュニケーションツール、投資へのアクセスを得ることで、彼らはより不公平な扱いを受けている。しかしそれは長く続かない。新しい分散型の世界は大変な景色を見せてくれるだろう。
ゆっくりくつろいで今を楽しもう。インターネットはその役割を果たしている。そしてそれ以上に良いものなんてなあねえんだ。また明日。
-Pomp-
OffTheChainジャパン
翻訳者ペンネーム:Decryptor